2010年6月17日木曜日

今までの主張を繰り返すのみの東京都

−−地区計画取消訴訟第4回口頭弁論−−

2010年6月10日(木)、中野区の警察大学校等跡地で進められている開発計画は、周辺の環境を悪化させるとして、地区計画の取消を求めて周辺住民が東京都を訴えている裁判の第4回口頭弁論が、東京地裁522号法廷で開かれました。

■地区計画条例取消訴訟は事実上併合

また、この地区計画に法的効力を持たせるため昨年10月に中野区が制定した「中野区中野四丁目地区における建築物の制限に関する条例」(地区計画条例)の取消を求めて同じく周辺住民が4月21日に中野区を提訴。その第1回口頭弁論も事実上併合という形で行われました。

■被告・東京都の書面の概要

前回の第3回口頭弁論(4月22日)では、裁判長は東京都に対して次回までに、これまでの原告の準備書面に対する必要な認否・反論をするように指示していました。これに対し東京都が準備した書面(3)では、原告が4月22日に求釈明の追加で求めた、警大跡地と高円寺北1丁目との間の「緩衝帯型オープンスペース」の定義について述べているに過ぎません。

その主張の概要は以下のとおりです。

「中野駅周辺まちづくりガイドライン2007」に示された緩衝帯機能についての被告の理解の理解を述べる。

緩衝帯としての機能確保は、低層住宅地の良好な住居の環境、日商、通風、騒音、圧迫感等に大きな変化が生じないよう、これらへの影響を軽減させる緩衝帯機能の確保であって、空間及び植栽を設けることが効果的である。

ガイドラインにいう「適切なオープンスペースを設けることなど」とは、単なる空間ではなく、植栽を設けることや近接する建物の高さをなるべく抑えることなど、さまざまな方策を意味する。……図面凡例「緩衝帯型オープンスペース」は、南側の三角地については広場や緑地、原告らの居住する西側(にしがわ)は道路と壁面後退で生じる空間を想定したものである。(斜体フォーラム)

被告は、西側隣地境界付近においては、緩衝帯型オープンスペースとしては、歩道上空地及び壁面後退による空間及び植栽を設けることにより、既存居住区との緩衝帯としての機能確保を図ることとされていると理解している。」

原告はこれまで、「中野駅周辺まちづくりガイドライン2007」と事業者が提出した「企画提案書」に図面とともに明記されている、「緩衝帯型オープンスペース」を、壁面後退にすり替え、反故したことについての求釈明を求めてきました。

さらに、前回口頭弁論では裁判長から被告に対し、「ガイドラインに書かれている『緩衝帯型オープンスペース』が当時どういう意味でつくられたのか」について回答するよう求められました。

しかし東京都は「中野区が対応したことであって、東京都としては答えられない……」といった趣旨の発言をし、裁判長は「都市計画決定にあたり都は中野区と情報交換をしているはず。東京都の立場でどのような情報の把握をしているのかを説明するのが基本である」と指摘しています。

東京都の書面は、裁判長の指摘に誠実に答えていると言えるのでしょうか?

■開発前の現状を知ってもらうために「検証申出書」を提出

原告は今回、「求釈明申立書」と「検証申出書」を提出しています。

検証の申出とは、裁判所に現地検証を求めるもので、日照権の侵害や風害の被害がある場合に現地を検証する場合がほとんどですが、原告側弁護人から裁判長に対して、今回の申出には、建物が建って被害が出た状況を検証するのではなく、緩衝帯の位置が原告の家と近接している現状を「建物が建っていない今の段階の環境で見る必要がある」という意図の説明がされました。

それぞれの内容は以下のとおりです。

●求釈明申立書の概要

1.「中野駅周辺まちづくりガイドライン2007」では、南側と西側の2か所が「緩衝帯型オープンスペース」として示されている。しかし、2008年に事業者が都に提出した企画提案書では両者の扱いが明らかに異なっているのに、何をもってガイドラインを反故にしていないというのか。

2.現時点でどのような植栽を予定しているのか。その植栽が緩衝帯として機能しうるのか。

3.公聴会や住民説明会、意見書の提出などの都市計画決定手続きにおいて、地権者や住民からどのような意見が出され、具体的にどのように反映されたのかまたは反映されなかったのか。

4.都が行った風環境調査の結果があるのか。

事業者から都に提出されている風環境調査の結果と、防風対策が具体的に記載されている結果の提出。

●検証申出書の概要

原告らの居住地と建設が予定されている大規模建物、「緩衝帯型オープンスペース」の位置関係を明らかにするために、原告らの居住地とその付近の検証を求める。

■原告による意見陳述に拍手

原告、被告双方の書面確認の後、原告による意見陳述が行われ、警察大学校等跡地の再開発計画について、杉並区住民と東京都・中野区・杉並区などとのかかわりについて説明し、この計画が住民無視で進められてきたことを陳述しました。

約10分間の陳述が終わると同時に傍聴席から拍手がおこりました。裁判長からは「拍手はやめるように」と注意がありましたが、思いがけない傍聴者の反応でした。

裁判後に行われた報告集会の感想にも、意見陳述について「良かった」という感想を多数いただきました。















裁判後の報告集会


 次回裁判

8月26日(木)午前10時15分から

東京地裁522号法廷

今後ともご支援をよろしくお願い申し上げます

道路(幅員12m)の工事が進む警大跡地西側

道路(幅員12m)の工事が進む警大跡地西側。左が、既存住宅地高円寺北1丁目
(2010年6月17日撮影)

右側の盛り上がった部分に大学施設が建設される予定。この大学施設と高円寺北1丁目の間に「緩衝帯型オープンスペース」の整備が約束されていたが、地区計画では6mの壁面後退しかない

奥の建物は東京警察病院

警察病院は現状の高さ約50m、大学施設は最高で高さ約55mの予定